感染症学雑誌
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原著
水痘ワクチンの力価と流通時のワクチン力価の安定性
神谷 齊浅野 喜造尾崎 隆男馬場 宏一熊谷 卓司永井 崇雄白木 公康
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2011 年 85 巻 2 号 p. 161-165

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抄録

わが国で開発された水痘ワクチンは健常者だけでなく免疫不全者の水痘予防に安全に使用できるワクチンである.現在世界で年間約 2,000 万人に使用されている.さらに,Oxman らは,約 4 万人の高齢者の臨床試験により水痘ワクチン (Zostavax) が帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛を予防することを示した.わが国の水痘帯状疱疹ウイルスの感染性は,他のウイルスに比べ非常に不安定であるため,エンベロープの安定性保持のため精製白糖やグルタミン酸ナトリウムなどの安定剤の使用などにより,感染性が保持されている.そこで,過去 5 年間にわたって,製造時と流通している水痘ワクチンの力価の検討を行ってきた.水痘ワクチンの生物学的製剤基準は 1,000 Plaque Forming Units(PFU)/dose 以上となっている.わが国の水痘ワクチン製造時の力価の 5 年間の年平均力価は,42,000~67,000PFU/dose であり,水痘予防ワクチンであるが,米国の帯状疱疹予防用水痘岡株ワクチン Zostavax に匹敵する高力価を有していた.また,上記のように感染性が低下しやすいため,流通段階での力価の低下が懸念される.本研究の結果,実際に医療施設等に流通しているワクチンの力価は保たれており,有意の力価の変動は認めなかった.以上のように過去 5 年間にわたって検討した結果から,現在流通している水痘ワクチンは水痘予防に使用する水痘ワクチンとしては十分な力価を有しており,Oxman らの報告した米国の帯状疱疹予防に使用された高力価ワクチン Zostavax に匹敵するワクチン力価も有していた.

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© 2011 社団法人 日本感染症学会
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