日本生気象学会雑誌
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原著
人口動態統計を利用した発生場所からみた暑熱障害の死亡率
星 秋夫稲葉 裕
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2002 年 39 巻 1,2 号 p. 37-46

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抄録

わが国の過去41年間(1959~1999年)における暑熱障害による死亡がどのような場所で発生したかを検討するとともに,暑熱障害死亡率と東京,名古屋,大阪での最高気温や真夏日の日数の気象条件との関連性について検討した.暑熱障害の死亡数は人口動態統計の「過度の高温への曝露」より求めた.1959~1999年までの41年間における暑熱障害の死亡件数は4,053件であり,年平均で約98.9件,死亡率(人口10万対)では0.0875人の割合で発生した.発生場所において,家庭での死亡は586件,居住施設13件,学校・サービス施設等61件,スポーツ施設66件,街路・ハイウエイ141件,工業地域111件,農場329件,その他明示された場所1,171件,詳細不明1,575件であった.65歳以上での死亡率が最も高く,次に0~4歳で高値を示した.また,0~4歳,65歳以上,家庭と農場では男女間の死亡率に大きな差異を認めないが,その他の年齢階級,発生場所では男性に比べて女性の死亡率が著しく低値を示した.1990-1999年の死亡率は1959-1968年よりも高値を示すが,1959-1968年と1990-1999年の年齢調整死亡率は同水準にあった.死亡率と東京,大阪,名古屋で観察された最高気温,真夏日の日数との間には有意な正の相関関係が認められた.近年10年間における高い暑熱障害の死亡率の要因として,人口の高齢化,暑熱環境の悪化が考えられる.

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© 2002 日本生気象学会
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