日本公衆衛生雑誌
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原著
要介護状態化リスクのスクリーニングに関する研究 介護予防チェックリストの開発
新開 省二渡辺 直紀吉田 裕人藤原 佳典天野 秀紀李 相侖西 真理子土屋 由美子
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2010 年 57 巻 5 号 p. 345-354

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抄録

目的 廃用症候群モデルを通じた要介護発生を効果的に阻止するには,自立高齢者の中から要介護状態化するおそれの大きい高齢者を適切にスクリーニングすることが必要不可欠である.著者らは,閉じこもり•転倒•低栄養の 3 つのリスクに着目し,それらのリスクを質問紙法により測定する18項目18点満点の「介護予防チェックリスト」を考案した。同チェックリストの要介護状態化リスク測定尺度としての信頼性および妥当性を,地域高齢者を対象とした横断および縦断調査により検証した。
方法 群馬県草津町在住の70歳以上全高齢者1,039人を対象に実施した訪問面接調査(2001年11月)により,チェックリスト項目について916人の有効回答を得た.このデータをもとに,①各項目の通過率•無答率による不適切な項目の除外,②内的整合法および Good-Poor 分析による信頼性の検討,③IADL 得点(老研式活動能力指標:手段的自立得点)を外的基準とした偏相関分析による併存的妥当性の検討を行った.さらに,2000年 4 月から2005年11月までの介護保険給付記録を調査し,面接調査時に自立状態であった者を対象に,④その後 4 年以内の要介護認定(本研究ではこれを「要介護状態化」と操作的に定義)に対する介護予防チェックリスト得点階級ごとの傾向性および性別•年齢•IADL 得点を調整したチェックリスト得点の寄与度を分析し,予測的妥当性の検討を行った.
結果 ①通過率が75%以上95%以下かつ無答率が 1%未満となる項目のみを採択したところ,15項目15点満点の尺度となった。②Cronbach の α 係数は0.79, Good-Poor 分析ではチェックリスト高得点群が低得点群より全項目で有意に平均得点が高かった。③IADL 得点との偏相関係数は−0.64で,比較的強い負の有意な相関がみられた.④チェックリスト得点が高い階級ほど要介護認定を受けた者の割合が有意に高かった(傾向性,P<0.001).また,性別•年齢•IADL 得点を調整したチェックリスト得点は,4 年以内の要介護認定に対し,1 点上がるごとのオッズ比が1.21(95%信頼区間:1.10-1.33)[死亡•転出者除外の場合は1.24(同1.11-1.38)]と,有意に寄与していた.
結論 介護予防チェックリストについて,要介護状態化リスク測定尺度としての信頼性,併存的妥当性および予測的妥当性が確認された.

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© 2010 日本公衆衛生学会
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