2015 年 50 巻 6 号 p. 278-291
社会的に関心が高いオゾン等の2次生成ガス物質にも適用可能であり、かつ、行政の担当者等モデルの非専門家にも簡単に利用可能な大気モデルADMER-PROを開発、公開した。ADMER-PROは以下の特徴を有している。1)有害大気汚染物質等任意の個別VOC成分を含む排出物質と2次生成ガス物質の濃度分布を同時に推定可能、2)諸物質の排出量等入力データをモデルに内蔵しているため、本モデルひとつで複数物質の濃度分布を推定可能、3)リスク評価でしばしば必要となる年間等長期間の平均濃度を比較的短時間で推定可能、4)Windows PCにて簡単な操作で実行可能。ADMER-PROを関東・近畿地方における複数物質の年間平均濃度分布推定に適用し、計算結果を実測値と比較することにより現況再現性を評価した結果、本モデルは、NOxや有害大気汚染物質のVOC成分等排出物質、2次生成ガス物質のいずれの濃度についても、おおむねファクター2の精度で実測値を再現する能力があり、比較的良好な現況再現性を有するモデルであることがわかった。本モデルの公開により、排出物質とそれらを原因物質として生成する2次生成ガス物質の両方を考慮した化学物質のリスク評価・管理が大きく進展することが期待される。