臨床血液
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Symposium 3
免疫チェックポイント阻害薬の開発
北野 滋久
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2017 年 58 巻 8 号 p. 966-976

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抄録

がん免疫療法のなかで,もっとも成功し世界的な注目を集めているのが免疫チェックポイント阻害薬である。2本剤はT細胞に抑制のシグナルを入れる受容体である免疫チェックポイント分子を抗体でブロックして,抗原提示細胞や腫瘍細胞に発現するリガンドからの免疫抑制のシグナルが入らないようにしてT細胞の活性化を持続させてがんを攻撃させる。2011年3月に抗CTLA-4抗体が切除不能悪性黒色腫に対して同剤として米国FDAから世界初の承認を受けた。その後,抗PD-1抗体が進行悪性黒色腫のみならず,非小細胞肺がん,腎細胞がん,ホジキンリンパ腫,頭頸部がんで国内承認を得てさらなる注目を集めている。さらに,その他のがん種においても,抗PD-L1抗体療法も含めて免疫チェックポイント阻害薬の臨床開発が積極的に進められている。さらに,複合免疫療法(併用療法)についての開発も積極的に行われており,いくつかのがん種ですでに開発が成功し先行している免疫チェックポイント阻害薬を軸として,他の薬剤との併用療法を検証する臨床試験が積極的に行われている。併用として,他のチェックポイント阻害薬,殺細胞性抗がん剤,分子標的薬,がんワクチン,サイトカイン療法,および放射線療法などが試みられている。近年の腫瘍免疫学の成果として進行がん患者において制御性T細胞,骨髄由来抑制細胞,腫瘍関連マクロファージなどの免疫抑制細胞が増加し,腫瘍微小環境において抗腫瘍免疫応答を低下させることが明らかになってきている。基礎研究から得られたデータからは,今後の治療開発の戦略の1つとして,これらの免疫抑制細胞群やそれらの制御に関与する因子の働きを抑えることが,抗腫瘍効果を高める可能性があると期待されている。これまでの本剤の開発状況とトランスレーショナルリサーチについて総括し,将来展望について概説する。

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© 2017 一般社団法人 日本血液学会
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