2016 年 84 巻 2 号 p. I_93-I_101
高解像度数値標高モデル(以下,DEM)を用いた氾濫解析をため池決壊時の氾濫流況予測手法として適用することの妥当性を検証した.解析対象は平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震による決壊ため池とした.解析には河川氾濫解析ソルバーNays2DFlood v4.1を用いた.入手できた現地のDEMのうち最も解像度の高い2 mDEMであっても,氾濫流況に影響を与える地物の形状が適切に表現されず,解析結果が実際の氾濫流況と異なった.そこで,解析の入力データに以下3点の修正を施し現地の状況を再現した;(1)地形モデルの修正による下池の堤体および排水路の形状の表現,(2)下池の初期湛水状態の表現,(3)流入ハイドログラフのピーク流量の低減.その結果,2 mDEMを用いた場合だけでなく,解像度の劣る5 mDEMを用いた場合でも実際の浸水域をほぼ再現する解析結果が得られた.