ミルクサイエンス
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90Y標識DOTA結合ウシラクトフェリンのマウス消化管動態の予備的研究
織田 浩嗣田中 美順山内 恒治阿部 文明
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キーワード: ラクトフェリン, 動態
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2020 年 69 巻 1 号 p. 29-39

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抄録

 目的:ウシラクトフェリン(LF)の摂取によるヒトでの感染防御作用や免疫調節作用が報告されている。経口摂取したLFがこれらの生体調節作用を発揮する作用メカニズムを考察するため,放射性核種で標識したLFの消化管動態を検討した。方法:LFと1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)を反応させ,アミド結合を形成させた。LFとDOTAの結合比を質量分析計で評価した。放射性核種イットリウム(90Y)をDOTAまたはDOTA結合LFにキレートさせた。90Y標識DOTAまたは90Y標識DOTA結合LFをマウスに経口投与し,放射線の分布を全身オートラジオグラフィーで観察した。結果:DOTAとLFは1:1の比率で結合した。90Y標識DOTA結合LFの経口投与では,投与10分後に主に胃で放射線が検出され,一部が小腸で検出された。投与60分後には胃で僅かに検出され,大部分が小腸で検出された。一方,90Y標識DOTAの経口投与では,投与60分後に胃と小腸で僅かに検出され,大部分が盲腸で検出された。結論:90Y標識DOTA結合LFを投与したマウスでは,主に小腸で放射線が検出された。経口摂取したLFは小腸で作用することで様々な生体調節機能を発揮する可能性が示された。

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© 2020 日本酪農科学会
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