日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第49回 日本医真菌学会総会
セッションID: P-122
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イヌの口腔内より分離された本邦初の Arthrographis kalrae について
*村田 佳輝佐野 文子亀井 克彦西村 和子
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キーワード: Arthrographis kalrae, イヌ
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抄録

Arthrographis kalrae (Tewari et Macpherson) Sigler et Carmichael 1976 は世界的に環境中に生息し,爪,皮膚および角膜などの表在性感染にとどまらず,副鼻腔炎,肺炎,骨髄炎,脳炎などの深在性真菌症を発症させる人獣共通新興真菌症の原因菌で,世界各国で環境分離および症例が報告されている.我々は 2004 年 4-6 月に家庭内で飼育されているイヌ (329 頭) およびネコ (95 頭) の口腔内真菌叢を調査したところ,11 歳避妊雌イヌの口腔内から本菌種と思われる1株を分離した.ポテト・デキストロース寒天培地上の集落表面は培養初期に白色綿毛状でやがてフェルト状となり,中心部は淡褐色,裏面は淡黄色を帯びていた.顕微鏡的には隔壁のある無色透明な菌糸と分節型および出芽型分生子を確認した.37℃,1 週間培養で発育したが,温度依存性の二形性は示さず,42℃ では死滅した.リボゾーム RNA 遺伝子の ITS および D1/D2 領域の配列は GenBank に登録されている A. kalrae の配列 AB116536 および AB116544と 98 および 99% 以上で相同を示した.また,当センターで保存されている本菌種ならびに類縁菌の Pithoascus langeroniiA. albaA. cuboideaA. lignicolaA. pinicola の同領域配列を比較したところ,ITS 領域では A. kalrae と同一クラスターに,D1/D2 領域ではかつて A. kalrae の有性型と考えられていた P. langeroniiA. kalrae の中間に位置し,両菌種で形成されるクラスターに属していた.以上より本分離株は我が国で初めて分離された A. kalrae と考えられる.現在までに我が国でヒト症例は記録されていないが,原因菌種不明の真菌性脳炎や副鼻腔炎には本菌種も考慮に入れたい.

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© 2005 日本医真菌学会
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