日本薬理学雑誌
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特集:神経伝達物質トランスポーター研究の新しい展開
グルタミン酸トランスポーターと脳形成
田中 光一
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2007 年 130 巻 6 号 p. 455-457

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抄録

グルタミン酸は,神経幹細胞の増殖,神経細胞の移動・成熟にとって重要な役割を果たすことがin vitroの実験から示唆されてきた.しかし,グルタミン酸受容体欠損マウスなどのグルタミン酸のloss-of-functionモデルでは,脳の形成異常を示さない.我々は,グルタミン酸トランスポーター欠損マウスを用いグルタミン酸のgain-of-functionモデルを作成した.そのモデルの一つに,大脳皮質・海馬・嗅球の層形成障害などの様々な発達異常が観察された.これらの異常は,過剰な細胞外グルタミン酸による神経幹細胞の分裂障害・神経細胞の移動および成熟障害によるものである.以上の結果は,脳の正常な発達にはグルタミン酸トランスポーターによる細胞外グルタミン酸濃度の厳密な制御が重要であることを示している.

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© 2007 公益社団法人 日本薬理学会
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