1981 年 43 巻 3 号 p. 375-383,385
牛蹄葉炎の発病機序を明らかにする目的で圧扁麦の過食とヒスタミンの肢動脈内注射による蹄葉炎の発症試験を実施した. I: 実験圧扁大麦を飽食させた4頭の実験牛は, 12~24時間後から食欲廃絶, 強度の水様性下痢が発現し, 約24時間後から全例蹄に疼痛を示した. しかしこれらの変化は, 一過性であり72時間後には回復した. 実験II: 4頭の実験牛に一側前肢の肢動脈内へ燐酸ヒスタミン30μg/kg注入した. 投与後数分間頸動脈圧の下降およびHt値の上昇がみられたがただちに回復した. ヒスタミン注入前肢では, 肢動脈圧の急激な上昇および肢静脈血Ht値の著明な上昇と同時に疼痛を示し, 浮腫が発現した. しかしこれらは24時間後に全例消失した. 実験III: 4頭の実験牛に実験Iの方法で圧扁麦を飽食させ, 24時間後にヒスタミンを実験IIの方法で投与した. その結果実験IIに比較して蹄の疼痛および浮腫が強く29~101日間跛行が持続した. 疼痛は蹄に限局し, 対照蹄に比べ熱感, 肢静脈の怒張および肢動脈の拍動が増強して明らかに急性蹄葉炎の症状を呈した. 以上の成績から圧扁麦の過食が蹄に軽度の障害を与え, その結果ヒスタミンに対する感受性が増強したものと推察され, ルーメンアシドージスおよびヒスタミンは蹄葉炎の発病に関与する重要な因子であると考えられた.