日本応用動物昆虫学会誌
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ヒメツノカメムシElasmucha putoni SCOTTの卵保護行動の効果
本保 義浩中村 浩二
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1985 年 29 巻 3 号 p. 223-229

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抄録

1981年6月初旬から7月中旬にかけて金沢市湯涌でヤマグワMorus bombycisにつくヒメツノカメムシElasmucha putoni SCOTTの雌成虫の卵および幼虫保護習性について調査した。卵を守っていた雌成虫82匹とその卵塊に個体識別マークをつけて2∼7日に1回のセンサスをした。
1) 卵を守っていた雌成虫57匹のうち,卵がふ化する以前,幼虫が1齢のうちに消失したのはどちらも6頭ずつ(10.5%)にすぎず,45頭(78.9%)は幼虫が2齢になっても幼虫とともにいた。雌成虫の保護行動は幼虫が2齢以上になると弱まった。
2) 人為的に雌成虫を卵塊から取り除いた場合(17例)には2齢幼虫になるまでに初期卵数の74.3%が消失したが,雌成虫が2齢まで保護しつづけた場合(45例)には25.3%が消失しただけであった。この差は雌成虫が除去されることによりアリなどの天敵による卵(とおそらく1齢幼虫)への捕食による死亡と1齢幼虫の分散(これも死亡につながる)の増大が原因であった。
3) 雌成虫が除去された卵塊では1, 2齢幼虫の消失は,all or none的におこり,雌が保護しつづけた場合には少数ずつランダムな死亡がおこった。
4) 何らかの原因で自分のうんだ卵塊(または幼虫)からはなれた雌成虫は他の卵塊(または幼虫)に入れかわって守ることがあった。

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