高齢社会が到来した今日, わが国の老年期痴呆疾患患者数は約130万人と推定されている. この数は21世紀に入っても増加して2035年には350万人に達すると予想される. アルツハイマー病はその過半数を占めると言われている. 今まではアルツハイマー病の人は痴呆症状のため家族や地域社会の人々から誤解を招き, つらい日々を送っていた. 痴呆症状が進行してくると介護している家族の負担も増し, 医療機関に援助を求めて来院する. この時点では痴呆もかなり進行しており, 入院治療などが必要になってくる. 笑顔の失われた人々に何が今できるのか, 地域でどのようにアルツハイマー病に取り組んでいるのかを紹介する. 57歳女性の症例の治療において, ドネペジルを投与しての経過を紹介し, アセチルコリンエステラーゼ阻害薬はあくまでも病態に作用する対症療法であり, 一時的に認知機能を改善するだけであり, その後各国での治療も参考にした経過を報告し, 今後地域におけるアルツハイマー病の早期診断早期治療が必要であることを述べる.