2020 年 44 巻 1 号 p. 33-39
国民生活基礎調査によれば,1986年以降の30年間において我が国の痛風患者数は約4倍,男性に限れば約5倍の増加を見ている.国民生活基礎調査は住民の自己回答に基づいていることから,他の指標として医師の診断に基づく診療報酬明細書(レセプト)データベースとの比較を行った.2013年と2016年の国民生活基礎調査で示された通院者率は,レセプトデータベース(2010年~2014年)による痛風有病率と同等の結果であった.したがって,国民生活基礎調査の結果は痛風患者の動向をほぼ正確に反映していると考えられた.痛風が急激に増加した要因であるが,痛風の有病率が国民生活基礎調査においてもレセプトデータベースによる解析結果においても60歳代から70歳代においてピークを示したことから,近年の高齢者数の増加がその背景にあると考えられた.さらに,高齢者の中においても,男性では痛風有病率は経年的に上昇傾向であり,痛風患者数の増加に寄与したと考えられた.今後も高齢者数は増加し続け,2042年にピークを迎えると推定されていることから,痛風患者数の更なる増加が予想された.