Journal of Pesticide Science
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アゾール系新規殺菌剤S-3308のUstilago maydisへの作用機構
高野 仁孝小栗 幸男加藤 寿郎
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1983 年 8 巻 4 号 p. 575-582

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抄録

S-3308の抗菌作用機作について, トウモロコシ裸黒穂病菌 (Ustilago maydis) を用いて検討した. 本菌を液体培地で振とう培養すると小生子の状態で増殖するが, S-3308 (2ppm) 含有培地で培養すると小生子数および菌体乾重の増加は強く抑制され, 分岐やくびれなどの特有の形態変化が認められた. これらの形態異常は, 本菌にトリアリモールを処理したときのものと酷似していた. ところで本剤は, タンパク質および核酸の生合成にはほとんど影響を与えなかったが, 100ppm処理によって呼吸阻害を引き起こした. しかし本剤の抗菌活性は, 呼吸阻害が認められない低濃度区においても認められたことから, 呼吸阻害作用のみで本剤の抗菌性を説明することは困難と考えられた. 一方本剤は, 2ppmで本菌のエルゴステロール生合成を強く阻害した. すなわち, 本剤処理によってエルゴステロールの相対量が低下し, その前駆体で14位にメチル基を有する24-メチレンジヒドロラノステロール, 14α-メチル-Δ8,24(28)-エルゴスタジエノールおよびオブツシホリオールの蓄積が認められた. また, 14C-アセテートの脂質画分への取込み実験においても, 同様の結果が得られたことから, 本剤の抗菌活性は, エルゴステロール生合成系における14位の脱メチル化反応の阻害に起因するものと考えられた.

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