2004 年 7 巻 1 号 p. 19-29
この論文では,従来分析を進めてきた日本語標準語形の地理的分布データについて,新たな地理的情報を加え,二つの単純化技法を適用した.一つは地理的位置を鉄道距離によって表現したことである.もう一つは2次元的な地理的情報を点で表わして,日本列島を東西の1次元で示したことである.これにより,もう1次元に別現象を表示できる.ここでは県ごとの標準語形使用率を示した.地理的位置と標準語使用の散布図にあたる.本論文では「河西データ」を用いた.『日本言語地図』(LAJ)の一部項目の数値データである.鉄道距離という広義の社会言語学的情報を加え,県ごとの標準語使用率との関連を分析した.東京と京都の影響力の大きさをくらべることにより,標準語形使用に古都京都が基本的な力を及ぼしていたことと,東京からの伝播が地域的にも時期的にも限られることが,読み取れた.本稿ではこの考察をふまえて,社会言語学の理論的問題にも言及する.