分析化学
Print ISSN : 0525-1931
誘導結合プラズマ発光分析法によるコメ1粒中の無機元素の定量
進藤 久美子安井 明美
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1997 年 46 巻 10 号 p. 813-818

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抄録

コメ1粒のような少量試料中の無機元素測定法を検討した.コメ多数点をより迅速に処理するため, 分解容器にホウケイ酸ガラス製ねじ付き試験管を用い, これを多数装てんできる乾式ブロック浴で加熱する湿式分解とし, 硝酸に過酸化水素あるいは過塩素酸を組み合わせて分解を行った。硝酸一過酸化水素分解では150℃で分解操作を行い, 硝酸-過塩素酸分解では過塩素酸を蒸発させるため, 最終段階で250℃に温度を上げた.どちらの方法でも約2時間で32本の分解を行うことができた.試験管内の分解物は, 1%塩酸を加えて溶解させた後, 誘導結合プラズマ発光分析装置で多元素同時定量し, 無機元素含有量を求めた.コメ1粒分に相当する玄米標準試料の粉末約20mgを分解に用いて検討した結果, 硝酸-過酸化水素による分解がコメ1粒のような少量な試料における, P, K, Mg, Ca, Zn, Mn, Fe, Cuの測定の前処理法として適用可能であった.含有量が低いため, Fe, Cuでは相対標準偏差が少し高かった.硝酸-過塩素酸ではMnの値が低くなったが, 過塩素酸を蒸発させるために高温にしたことが原因と考えられた.硝酸-過酸化水素分解で実際の玄米, あるいは精白米の100粒を用いて, 1粒中の無機元素濃度を測定し, 含有量の変異を調べたところ, 同一産地内の “日本晴” ではこれら元素の含有量は2σで平均に対し, 玄米でP, K, Mgに15%前後, Ca, Zn, Mn, Fe, Cuに20~40%の変動が見られた.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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