2005 年 54 巻 9 号 p. 807-816
1,2-ジアシルグリセロール(1,2-DAG)の位置異性体(reverse isomers)を同定するためのエレクトロスプレーイオン化質量分析法を検討し,その特徴を明らかにした.不飽和度の異なる種々の異性体をジニトロフェニルウレタン(DNPU),ジニトロベンゾエート,ニコチネート及びアンスリルウレタンへ変換してスペクトルを測定した.その結果,MSでは,いずれの誘導体からも強い分子量関連イオン([M-H]-又は [M+Na]+)が得られたが,構成脂肪酸由来のイオンは検出されなかった.一方,MS/MSでは,DNPUから [RCOO]-イオンが検出された.16 : 0や18 : 1など不飽和度の小さな脂肪酸を含む位置異性体のsn-2位由来の [R2COO]-の強度はsn-1(3)位由来の [R1COO]-よりも大きく,両異性体の識別が可能であった.一方,高度不飽和脂肪酸を含む異性体では,この差は小さく,20 : 4や22 : 6は結合位置にかかわらず脱離しやすいことが認められた.[RCOO]-イオンの生成機構について考察した.