2017 年 73 巻 6 号 p. II_53-II_61
近年,北海道酪農地域では,家畜ふん尿を主要な原料としたバイオガスプラント(以下,BGP)の導入が進んでいる.BGPは,家畜ふん尿の適正処理やバイオガスのエネルギー利用,発酵残渣の液肥利用を通して,窒素汚染や温室効果ガス排出の削減,肥料やエネルギーの外部購入の節約など,地域における物質循環に影響を与え,資源や資金を地域内で循環させる経済的役割を果たす.本研究では,2つの北海道酪農地域を対象に,産業連関や農林水産統計などの各種統計,土壌における炭素と窒素の動態を扱うモデルなどを用い,BGP導入による物質循環及び経済の変化を解析した.その結果,BGP導入により,液肥利用が進むことで地域の循環利用率が上昇することを示し,そして経済効果は地域の農業・畜産部門生産額の3.6~6.8%であることを示した.