ウイルス
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インフルエンザウイルスの受容体と宿主域変異の分子機構
鈴木 康夫
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2001 年 51 巻 2 号 p. 193-200

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抄録

インフルエンザは, 人獣共通伝染病であり, インフルエンザウイルスの宿主は様々な動物種にまたがる. 本稿では, インフルエンザウイルスヘマグルチニンが認識する宿主細胞受容体の精密な化学構造および, インフルエンザウイルスが種の壁をどのようにして越えるのかについてその分子機構を著者等の成果を基に概説した. ヒト, ブタ, トリ, ウマから分離されるインフルエンザAおよびヒトから分離されるB型ウイルスは, いずれもシアル酸 (Sialic acid, SA と略記) を含む糖鎖, 特に, シアリルラクト系I型およびII型糖鎖 (I型糖鎖: SAα2-6 (3) Galβ1-3GlcNAcβ1-; II型糖鎖: SAα2-6 (3) Galβ1-4 GlcNAcβ1-) と強く結合することを述べた. さらに, A型インフルエンザウイルスヘマグルチニン遺伝子の一塩基置換 (唯一のアミノ酸置換) により, A型ウイルスの宿主域が変わり得ること, その結果宿主の壁を越える可能性があることを実験的裏付けに基づき解説した.

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© 日本ウイルス学会
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