疲労は,痛みや眠気と並んで非常に重要な生体シグナルであるが,疲労の原因や疲労を感じる機序は,全くと言っていいほど不明である.また,疲労・ストレスによるヘルペスウイルスの再活性化は,良く知られた現象であるが,これまでは短期的なストレスと再活性化の関係が研究されているだけであった.今回我々は,過労死などの原因もなる中・長期的疲労がhuman herpesvirus 6(HHV-6)の再活性化を誘導することを見出した.これは,HHV-6の再活性化誘導因子の解明に役立つだけでなく,疲労の客観的な定量や疲労の機序の研究にも役立つものと考えられた.
また,HHV-6の潜伏感染特異的遺伝子の研究によって,HHV-6には潜伏感染と再活性化の間に,潜伏感染に特異的遺伝子および蛋白の発現亢進が見られるにもかかわらず,ウイルス産生の見られない中間状態が存在することを見出した.この中間状態に発現する潜伏感染蛋白に対する血清抗体は,病的な疲労状態である慢性疲労症候群患者の約4割で検出された.これらの結果は,HHV-6が疲労という生物学的現象に深く関わるウイルスであることを示していると考えられる.