歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
マウス有郭乳頭味蕾のセロトニンの免疫組織化学
内田 隆
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1985 年 27 巻 1 号 p. 132-139

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抄録

無処置およびセロトニンまたはセロトニンの前駆物質である5-ハイドロキシトリプトファン (5-HTP) を投与したマウスの有郭乳頭味蕾について, 光顕では浮遊切片法を用いたPAP法で, 電顕ではプロテインA・金コロイド法でセロトニン様免疫活性の局在を調べた。また対照として側脳室壁と第3脳室壁に分布するsupraependymal nerve plexusを同一の方法で免疫染色した。
無処置およびセロトニンを投与したマウスでは, 味蕾内にセロトニン様免疫活性は全く認められなかったが, supraedymal nerve plexus内には明瞭なセロトニン様免疫活性を示す神経線維が認められた。5-HTP投与後のマウスでは, 味蕾内の一部の細胞がセロトニン様免疫活性を示し, 電顕免疫組織化学ではIII型細胞の細胞質核・芯あり小胞に免疫活性が認められた。これらの免疫活性は抗セロトニン血清をセロトニンクレアチニン硫酸で吸収させることにより完全に消失したが, 5-HTPによって免疫活性影響されなかった。
マウス有郭乳頭味蕾のIII型細胞は, 5-HTPを取り込みこれをセロトニンに転換する能力を持っているが, 生理的状態ではほとんどセロトニンを含まず, セロトニン以外の化学伝達物質がIII型細胞から神経終末への味覚伝達に関係している可能性が考えられた。

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