園芸学会雑誌
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気温および光強度がホウレンソウならびにサラダナのβ-カロテン濃度に及ぼす影響
小山 初枝篠原 温伊東 正
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1999 年 68 巻 2 号 p. 414-420

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抄録

葉菜類のうちβ-カロテン濃度の異なるホウレンソウとサラダナの2作物を供試し, その濃度に及ぼす光強度および気温の影響を調査した.両作物とも温度および光強度の処理にかかわらず, 生体重の増加に伴いβ-カロテン濃度が低下した.光および気温の試験では, 一定期間生育させた場合, 区によって生体重の差が生じるので, 生体重ベースのβ-カロテン濃度を比較した.その結果, 低温によってβ-カロテン濃度を増加させる機作には, 生体重に伴っていないものがあると考えられ, 一般に, 低温下で呼吸が抑制されることから, より多くの光合成産物がβ-カロテン合成を含む二次代謝経路にシフトされたことが, β-カロテン濃度を高くしたのだろうと考えた.同様に, 弱光下では, 光合成速度が低下するため, 光合成産物が不足し, β-カロテン濃度が低くなったと考えた.以上, ホウレンソウおよびサラダナにおいて, β-カロテン濃度は, 生体重の増加に伴って低下し, かつ, 低温条件で増加, 弱光条件で減少することを明らかとした.本実験で供試したホウレンソウとサラダナは, β-カロテンの濃度に大きな差が認められているにもかかわらず, それぞれのβ-カロテン濃度が光と温度に対して, 同様の影響を受けることが明らかとなった.このことから, 低温と強光は他の葉菜類でもβ-カロテン濃度を高めるものと予測され, β-カロテン濃度を富化できる栽培環境として実用化が期待できるものと考えた.

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