マイコトキシン
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Fusarium graminearumにおけるゼアラレノンの生合成機構と制御
Jung-Eun KimHokyoung SonYin-Won Lee
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2018 年 68 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

 ゼアラレノン(ZEA)は,エストロゲン作用を有するポリケタイド由来のマイコトキシンであり,数種のフザリウム属菌により産生される.ZEAは,F. graminearumに感染した穀物にしばしば蓄積し,人畜に危害を及ぼす.ZEAの生合成経路に関する遺伝子情報はフォワードおよびリバースジェネティクスにより解明されている.2つのポリケタイド合成酵素(PKS)遺伝子を含めて4つの遺伝子がZEA生合成遺伝子クラスター内に存在している.この2つのPKS遺伝子に加え,ZEB1ZEB2はそれぞれイソアミルアルコール酸化酵素とbZIP DNA結合部位を持つ転写活性因子をコードする遺伝子である.ZEB2は,1つのプロモーターを介して2つのアイソフォーム(ZEB2LとZEB2S)を産生する.ZEB2LとZEB2Sは相互作用し,それぞれZEA生合成の際のZEB2の自己発現制御において正または負の因子としてかかわっている.F. graminearumにおけるcAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)経路の触媒ならびに制御サブユニットである,CPK1とPKRは,ZEAの生合成を抑制する.特に,PKA経路は,ZEAの産生において,ZEB2Lを転写及び転写後の段階で制御していることが分かった.これらの知見は,F. graminearumにおけるZEA生合成の基本的な制御メカニズムの理解を深めるものである.

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© 2018 日本マイコトキシン学会
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