日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
血糖連続測定による経口ブドウ糖負荷試験の検討
特に血糖曲線の型およびその多様性の成因の解析
渕上 正章中野 博司大庭 建三妻鳥 昌平
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1994 年 31 巻 7 号 p. 518-524

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抄録

血糖連続測定下に75g経口ブドウ糖負荷試験を行い, 耐糖能別に血糖曲線の型の特徴を明らかにし, その血糖曲線の多様性の成因を主に年齢面およびインスリン分泌の面より検討した. 対象は21歳から87歳までの非肥満男女合計70例である. 血糖曲線の型は大きく1峰型, 2峰型および持続上昇型の3つの型に分類された.
血糖曲線の型別頻度を耐糖能別にみると, 正常型群 (n=15) は1峰型33.3%, 2峰型66.7%であり, 境界型群 (n=31) は1峰型67.7%, 2峰型29.0%, 持続上昇型3.2%, DM1群 (糖尿病型で空腹時血糖値140mg/dl未満) (n=15) は1峰型66.7%, 2峰型13.3%, 持続上昇型20.0%, DM2群 (140mg/dl上) (n=9) では2峰型は1例もなく, 1峰型77.8%, 持続上昇型が22.2%であった. 2峰型の頻度は正常型群が他の群に比し有意に高率であった. また, 境界型群の2峰型の9例中8例は若壮年群 (60歳未満) であり, 1峰型の頻度を年代別に比較すると老年群は17例中15例と, 若壮年群14例中6例に比し, 有意に高率であった.
DM2群を除外した症例について1峰型と2峰型の2群に分け比較すると, 頂値に到る時間および頂値は1峰型群が2峰型群に比し有意に高値であり, 初期インスリン反応を示す各種指標も1峰型群が2峰型群に比し有意に低値であったが, 後期インスリン反応には差がなかった.
以上の結果は, 1峰型と2峰型の血糖曲線の形成には初期のインスリン反応の差が大きな一次的要因である可能性を示唆している. また, 老年者の境界型のほとんどは, 若壮年者の境界型と異なり初期のインスリン反応の低下を伴った1峰型であった.

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