日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
クリティカルパス作成のための, 大腿骨頸部骨折術後リハビリテーション長期・短期プログラムの比較検討
阿部 勉土田 典子石橋 英明山本 精三
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2001 年 38 巻 4 号 p. 514-518

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抄録

この研究の目的は, 大腿骨頸部骨折の術後後療法における, 従来の8週間のリハビリテーションプログラム (Long Program: LP) と, 近年, 臨床経過より新たに試作した4週間のプログラム (Short Program: SP) との間で, 適切なクリティカルパス作成のためにどちらのプログラムが, 有効性, 安全性, 経済性の観点から適切であるかを明らかにすることである. 対象は, 両群とも65歳以上, 受傷前に独歩または杖歩行が自立していた, 手術で骨折部の良好な整復および固定性が得られた, 片麻痺, Parkinson 病などの神経疾患を持たない, 病的骨折でない者という条件を満たす症例を選んだ. このうちLP群は, 101名 (平均年齢83.1±7.0歳, 男性12名, 女性89名), SP群は, 143名 (平均年齢82.8±7.5歳, 男性19名, 女性124名) であった. リハビリテーションプログラムの効果を検討するために, 入院期間と自立歩行再獲得率, 痴呆と年齢による影響を比較した. また, プログラムの安全性として, 術後合併症の発生頻度, 経済性として, 入院期間中の医療費を調査し比較した. 入院期間は, 有意にSP群で短縮された (p<0.01). 自立歩行再獲得率は, 有意差は認めなかった. 痴呆症例の自立歩行再獲得率は, 有意にSP群で高かった (p<0.05). 術後合併症は, 有意にSP群で減少した (p<0.05). 入院費用は, 有意にSP群で低くなった (p<0.01). 以上より, SPは訓練効果を維持したまま平均で約1カ月間の入院期間の短縮を可能とし, 有効性, 安全性, 経済性に優れており, 痴呆や骨折型に影響されることなく, 大腿骨頸部骨折のクリティカルパスに適切であると考えられる. しかし, 85歳以上の超高齢者の場合は, SP群での自立歩行再獲得率が低く, 歩行訓練開始後に従来のような十分な期間が組み込まれた超高齢者用のプログラムが必要であると思われた.

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