日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
終末期高齢者の医療に関する医師と看護師の意識調査
萬谷 直樹小暮 敏明伊藤 克彦坂本 浩之助高玉 真光田村 遵一
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 40 巻 5 号 p. 504-508

詳細
抄録

終末期高齢者への医療のあるべき姿に関して, 医師・看護師の双方にアンケートによる調査を行った. 調査目的の一つは終末期高齢者への医療に対する医療スタッフの現時点での考え方の分布を知ることであり, もう一つは医師・看護師間の意見差の有無を調べることである. 長期療養型病床 (4施設) に勤務する医師・看護師を対象とした. 長期間寝たきり状態となっている典型的ケースに対しての望ましい医療についての医師と看護師の意見の分布をアンケートで調査するとともに, 医師・看護師間の分布の差について解析した. 医師18人, 看護師84人から回答が得られた. 再燃性の肺炎に関する医療についての最多の意見を集約すると,「酸素投与も行い, 注射による抗生剤も考慮し, 増悪時に数日間末梢より点滴 (その間は経鼻胃管中止) とする」というものであった. 繰り返す尿路感染 (尿閉なし) に対しては,「短期のみ尿道カテーテル留置を行い, 膀胱洗浄を数日間行い, 注射薬による抗生剤投与を行う」というものであった. 慢性貧血に対しては「鉄剤のみを使用する」という意見が最多数で, 褥瘡に対しては「通常の処置を行う」との意見がほとんどであった. 延命治療については,「家族にお話しして積極的な治療をしない」との意見が多数であった. 医師・看護師間ではほとんどの項目で, 類似した分布を示したが, 肺炎時の栄養方法 (p=0.0544) と膀胱洗浄 (p=0.0531) については, 双方の意見の分布が異なる傾向がみられた. 今回の調査結果を契機に, 終末期高齢者への医療に対する考察や議論が今後いっそう活発になることを期待する.

著者関連情報
© 社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top