日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
在宅訪問栄養食事指導制度に対する栄養士の意識調査
制度の普及促進に関する提言
平川 仁尚益田 雄一郎植村 和正内藤 通孝葛谷 雅文井口 昭久
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2003 年 40 巻 5 号 p. 509-514

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抄録

訪問栄養食事指導は在宅要介護高齢者の栄養管理に重要である. 本研究はその普及を妨げている要因を明らかにし, 制度の普及促進に関する提言を行った. 2002年9月から11月に, 全国在宅訪問栄養食事指導研究会に所属する栄養士263人にアンケート調査票を郵送した. 調査内容は, (1)_調査対象者の属性, (2) 訪問栄養食事指導の実績, (3) 訪問栄養食事指導の普及を妨げる要因, (4) 訪問栄養食事指導普及への展望についてであった. アンケート回収率は61.1%であった. 対象者の主な仕事内容は,「栄養管理」49.7%,「給食管理」30.5%,「訪問栄養食事指導」12.8%であった. 訪問栄養食事指導の経験者は53.5%であり, 今までに指導した人数は「1~5人」が最も多かった. 指導内容は,「調理指導」27.5%,「摂取栄養量の算定」25.3%,「新メニュー・食品の紹介」23.6%,「体重測定等の身体計測」13.3%であった. 指導により改善がみられたと回答した者は76.8%であり, その改善点は,「介護者, ヘルパーの食事作りに対する意識が改善された」30.0%,「患者さん自身の食事に対する意欲が増してきた」24.0%,「食事内容が改善された」21.5%であった. 指導を行えない理由は,「医師からの依頼が無い」21.7%,「栄養士の人数が足りない」13.3%であった. また, 普及を阻害している要因として, (1) 制度の知名度が低い, (2) 患者のニーズが少ない, (3) 収益性が上がらない, (4) 栄養士が不足している, などが挙げられた. 患者および医療者への宣伝, 訪問栄養食事制度の見直しや訪問栄養士の質と量の確保が必要である.

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