85歳以上の超高齢者は将来的に人口増が見込まれるが, その身体機能, 認知機能, 日常生活機能, 社会的活動状態, 心理的状態に関しては明らかではないことが多い. 本研究は超高齢者の実態を把握することを目的とした. 東京都板橋区I地区に在住の85歳以上高齢者を対象に悉皆調査を実施した. 独居の場合は本人のみ, 同居者がいる場合は本人および同居家族を調査対象とした. 住民基本台帳に記載の住所に居住する対象者311名中235名から調査協力が得られた. 参加率は75.6%であった. 調査参加者を何らかの介護が必要な群と介護が必要ない群に分け, 視聴覚機能, 病歴, バーセル指標, MMSE, 老研式活動能力指標, 握力, 主観的健康感, 主観的幸福感を比較した. 結果から, 地域在住超高齢者の42%が何らかの介護を必要としていることが明らかになった. また, 介護を必要としていない場合でも, バーセル指標による日常生活動作では, 完全自立であるものは70%であり, 超高齢期で虚弱者が増加している実態が明らかになった. さらに, 介護が必要な群は, 介護が必要ない群に比べて, ほとんどの指標で機能低下が確認されたが, 主観的幸福感では両群間で違いが確認されなかった.
これらの結果は超高齢期では, 日常生活機能や身体機能の低下が亢進する一方, それらの低下に対する心理的適応が進んでいることを示唆しており, この適応プロセスを明らかにし, 心理的適応を助長・支援することが, 身体的虚弱が進行する超高齢者の Well-being の向上に重要な要因であると考えられた.