Medical Mycology Journal
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総説
血液領域における侵襲性アスペルギルス症
木村 俊一
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2016 年 57 巻 2 号 p. J77-J88

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抄録

近年,血液領域における侵襲性アスペルギルス症 (IA) の治療成績は改善傾向にあるが,依然,頻度が高く致死的な合併症の1つである.特に急性白血病に対する化学療法や造血幹細胞移植など長期の深い好中球減少を伴う治療でリスクが高い.また,同種移植後に移植片対宿主病を発症し,ステロイド治療を受けている場合もリスクが高まる.IA予防のため,長期の好中球減少が予測される治療はHEPAフィルターを用いた防護環境で実施することが推奨される.IAの既往やアスペルギルスのコロナイゼーション,IAの発症頻度の高い施設,防護環境で管理できない場合などではアスペルギルスに対する抗真菌薬の予防を検討する.IAの予後の改善には早期の診断と迅速な治療開始が重要である.CTをはじめとした画像検査やβ-D-グルカンやガラクトマンナン抗原などのバイオマーカーが早期診断に有用である.好中球減少期に広域抗菌薬不応性の発熱が持続,あるいは再燃した場合,IAをはじめとした真菌感染症を想定し,経験的な抗真菌治療が標準治療として用いられる.しかし,近年の診断技術の向上により,画像やバイオマーカーで所見がある場合のみ抗真菌薬を開始する先制治療が試みられるようになった.IAの標的治療ではボリコナゾールが第一選択薬であり,リポソーマルアムホテリシンBが代替薬に位置づけられる.エキノキャンディンとの併用療法は,難治例などで有用な可能性がある.

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© 2016 日本医真菌学会
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