安定同位体比を指標として用いることで,化学反応の視点から生態系における生物的,化学的過程を解析することが出来る。例えば,水系における生元素物質循環の活性部位,すなわち富栄養化や酸化還元境界がどこにあるのかを明らかにできる。また,色々な生物の栄養段階や起源の食物連鎖網を示すことが可能である。さらに,安定同位体比法を発展させると,人間社会と自然生態系とを物質循環の1つのユニットとして統合した流域の新しい解析手法の構築の可能性に言及できる。流域研究には自然科学のみならず,色々な学問領域からのアプローチが必要で,安定同位体比には分野間の情報を翻訳する標準的指標としての役割が期待される。