2013 年 74 巻 6 号 p. 1488-1494
症例は67歳,男性.胸部不快感を主訴に来院した.上部消化管内視鏡検査にて胸部中部食道に1/4周性の1型腫瘍を認め,生検にて扁平上皮癌と診断された.また十二腸下行脚に粘膜癌を認めた.胸腹部CTにて肝転移は認めなかったが,広範囲にリンパ節の腫大(No.7,No.106)が認められた.術前化学療法(FP療法)を1クール施行後,食道癌根治術および十二指腸局所切除術を行った.食道の病理組織学的所見はBasaloid-squamous carcinoma,十二指腸はcancer with adenomaであった.軽快退院後,補助化学療法(FP療法)を2クール行ったが,術後6カ月目のCTで肝S7に直径4cmの転移巣が認められた.他の部位には転移が認められなかったため,肝後区域切除術を行った.肝転移巣の病理組織所見は食道原発巣と類似の所見であった.肝切除後から2年半経過した現在,無再発生存中である.