日本東洋医学雑誌
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消化管の空腹期強収縮運動に及ぼす六君子湯の影響
村国 均小澤 哲郎清宮 清治継 行男
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1992 年 43 巻 2 号 p. 255-262

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抄録

慢性胃炎や消化管術後などで上腹部不定愁訴を有した患者に有効とされる六君子湯について, 8本の双極電極を消化管に植込んだ3頭のイヌを用いて筋電図学的に検討を加えた。六君子湯は消化管の空腹期強収縮運動 (IMC) の発現周期を短縮し, 十二指腸から回腸までの蠕動運動の伝播時間である全小腸伝播時間 (TET) を統計学的に有意に促進した。さらに消化管局所の運動亢進を示唆するIMCの phase II の出現率も増加した。臨床上, 実験から得られたこれら所見はもたれ感, 空腹感の欠如, 食欲不振, 吐逆, 便秘などの改善につながると思われた。一方, 六君子湯は食後期運動にたいしては筋電図学上明らかな作用を認めなかった。六君子湯の作用機序は消化管平滑筋にたいするアセチルコリン放出の促進などの直接作用でなく, 平滑筋側のムスカリン受容体, あるいは筋収縮のメカニズムであるCaイオンなどの second messenger に影響を及ぼすことが考えられた。

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