Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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家畜のミルクオリゴ糖
Tadashi NakamuraTadasu Urashima
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2004 年 16 巻 88 号 p. 135-142

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抄録

乳は新生児にとって唯一の食糧であり、そのため多くの栄養素とともに未成熟な新生児の健康や恒常性の維持に必要な生物学的機能性成分が含まれている。ヒトはウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマと言った様々な家畜から乳を採取し、市乳または乳加工品として利用している。
乳成分の1つであるミルクオリゴ糖には、近年、新生児に対する栄養源としてばかりでなく感染性のウイルスや細菌に対する抗感染物質としての意義が認められてきている。また、ミルクオリゴ糖は乳児の体内複合糖質、とくに神経系の複合糖質の生合成に必要な物質でもある。
家畜の乳は各種の生理活性物質の分離源として有用である。これらの家畜の乳、特に初乳中には数多くの中性オリゴ糖のほか、大量のシアリルオリゴ糖が含まれている。したがって、家畜の初乳はミルクオリゴ糖を大量調製するための原料として適している。分離技術の向上により、製薬や食品産業へのこれらミルクオリゴ糖の利用が可能となるであろう。多種多様なオリゴ糖からなる「オリゴ糖ライブラリー」の構築は、様々なタイプのレクチンや抗体のエピトープ解析や、糖転移酵素や糖加水分解酵素の研究にも有用であろう。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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