栄養学雑誌
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原著
成人における経済的要因と食に関する認知的要因,食行動,および食のQOLとの関連
林 芙美武見 ゆかり村山 伸子
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2015 年 73 巻 2 号 p. 51-61

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抄録

【目的】成人を対象に,経済的要因と食に関する認知的要因,食行動,及び食のQOLとの関連を明らかにすること。
【方法】平成23年「食育に関する意識調査」(内閣府)のデータを用い,満20歳以上の層化無作為抽出された男女3,000名のうち,回答が得られた男女1,867名から,回答に不備のなかった者を分析対象者とした(1,522名:男性706名,女性816名)。経済的要因として世帯の年間収入(200万円未満,200~600万円,600万円以上)と主観的な暮らし向き(ゆとりなし,どちらでもない,ゆとりあり)を独立変数,食に関する認知的要因など計9項目(35指標)を従属変数とし,性別などを共変量とした多重ロジスティック回帰分析を行った。
【結果】食品選択で重視する要因では,“200万円未満”や“ゆとりなし”は,“600万円以上”や“ゆとりあり”に比べて,価格や量・大きさのオッズ比が有意に高く,おいしさや産地,栄養価などは有意に低かった。また,今後身に付けたい知識では“200万円未満”や“ゆとりなし”で食費を節約する料理の作り方のオッズ比が有意に高く,健康に配慮した料理の作り方などは有意に低かった。さらに,朝食などの食行動は,世帯の年間収入ではなく,主観的な暮らし向きとの間に有意な関連を示した。
【結論】経済的要因,特に主観的な暮らし向きは,栄養教育の対象となる知識や態度などの認知的要因や食行動,食のQOLと関連していることが示唆された。

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© 2015 特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
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