臨床神経学
Online ISSN : 1882-0654
Print ISSN : 0009-918X
ISSN-L : 0009-918X
<Progress of the Year 2014 02> 多系統萎縮症― Update ―
MSAとオートファジー
若林 孝一丹治 邦和
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 54 巻 12 号 p. 966-968

詳細
抄録

オートファジーは細胞内分解システムの一つであり,ヒトではオートファゴソーム膜の形成にAtg8ホモローグ(LC3,GABARAP,GABARAPL1,GATE-16)が必須である.レビー小体病(LBD)と多系統萎縮症(MSA)剖検脳を対象に,Atg8ホモローグの変化について病理学的および生化学的検討をおこなった.これらのタンパク質は正常対照では神経細胞の胞体に局在していた.一方,LBDではレビー小体に陽性所見をみとめ,MSAではグリア封入体がLC3強陽性を示した.凍結組織をもちいた定量解析の結果,LBDの側頭葉皮質ではGABARAP/GABARAPL1が正常対照と比較し有意に減少していた.MSAの小脳でもLC3,GABARAP/GABARAPL1およびGATE-16が有意に減少していた.LBDおよびMSAでは,オートファゴソーム膜の形成に異常が生じている可能性が示唆される.オートファジーの活性化や適切な制御によって,神経細胞内の異常タンパク質蓄積が抑制できれば,LBDやMSAをふくむ神経変性疾患に治療効果が発揮できる可能性がある.

著者関連情報
© 2014 日本神経学会
前の記事 次の記事
feedback
Top