2015 年 55 巻 9 号 p. 661-664
症例は77歳女性.突然の両下腹部と右臀部の疼痛に引き続き,脊髄円錐・馬尾症候群を来した.MRIでは脊髄円錐と,椎体(L1, L2),右大腰筋,右多裂筋,両側脊柱起立筋に病変をみとめた.これらの部位はいずれも同一高位の分節動脈の血管支配を受けるため,同一親血管の閉塞により一元的に虚血性障害を来したと考えられた.脊髄梗塞で椎体にも梗塞が及ぶことは知られているが,同時に生じた筋梗塞をMRIでとらえた報告は渉猟しえた限りではない.本例は,脊髄梗塞では椎体およびその周囲筋にも梗塞が及びうることを示す症例である.