日本食品微生物学会雑誌
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市販カット果実における衛生指標菌調査と接種した腸管出血性大腸菌O157: H7およびSalmonella Enteritidisの消長
名塚 英一稲津 康弘川崎 晋宮丸 雅人
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2004 年 21 巻 4 号 p. 269-274

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抄録

カットされたメロン, スイカ, パイナップル, グレープフルーツ, オレンジおよびキウイの一般生菌数, 大腸菌群および糞便系大腸菌群の実態調査を行った.カット果実の一般生菌数は2~6log10 cfu/gオーダーにあった.一般生菌数の平均値は, メロンの4.9±0.9log10cfu/gが最も高く, グレープフルーツは3.0±0.8log10cfu/gで最も低かった.大腸菌群はメロン, スイカおよびパイナップルでそれぞれ10検体中10, 8および9検体検出された.糞便系大腸菌群はメロン, スイカおよびパイナップルで検出され, 特にメロンで10検体中8検体と多く検出された.グレープフルーツ, オレンジおよびキウイでは糞便系大腸菌群は検出されなかった.
メロン, スイカ, パイナップルおよびグレープフルーツへ腸管出血性大腸菌O157: H7およびSalmonellaEnteritidisを検体1g当たり約4~5log10 cfu/gになるよう接種し, 4, 10, 20℃ で0, 12, 24, 48時間保存し, O157およびSEの消長を検討した.その結果, メロンおよびスイカに接種したO157およびSEは, 20℃ の保存で急激な増殖を示したが, パイナップルおよびグレープフルーツの20℃ の保存では, O157およびSEは増殖しなかった.4, 10℃ の保存ではどの果実においても接種したO157およびSEは増殖を示さなかった.
以上の結果, 市販品のカット果実では, 加工から販売に至る過程での微生物汚染や増殖の可能性が示唆された.さらに, カット果実に食中毒菌の汚染があった場合には, 食中毒菌は増殖または生残するため, カット果実による食中毒のリスク低減のためには汚染防止と10℃以下の低温管理が重要である.

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