高齢者膵頭部癌に対する拡大手術の適応と限界を明らかにする目的で, 60歳以上の膵頭部浸潤性膵管癌切除例150例を対象に80歳以上の超高齢群5例, 70~79歳の高齢群62例, 60~69歳の非高齢群83例に分け検討した. 切除率は超高齢群で28%と高齢群 (54%), 非高齢群 (58%) より低かったが, 非切除の理由は各群とも癌の高度進展が大多数であった. 術前併存疾患は超高齢群, 高齢群で高率であったが, 各群とも80%以上に拡大手術を施行し, 術後合併症発生率に差はなかった. しかし, 高齢群の術後在院死亡率は13%と高かった. 各群とも膵後方浸潤, リンパ節転移を中心に高度な組織学的進展を示し, 年齢を問わず拡大手術の必要性を認めた. 高齢群では根治度B以上の5生率は21%, 5年以上生存3例であったが, 超高齢群では全例根治度Cで最長11か月生存であった. 術後のQOLは各群で差はなかった. 以上より, 高齢者膵頭部癌に対する拡大手術の適応は根治度B以上が期待できる症例に限るべきで, 80歳以上の超高齢者に対する適応は慎重にすべきと考えられた.