日本消化器外科学会雑誌
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新しい腸瘻造設術 (low profile button jejunostomy) の手技と効果, pilot study
佐野 芳史鈴木 裕二村 浩史樫村 弘隆石橋 由朗高山 澄夫武内 孝介益子 博羽生 信義青木 照明
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2004 年 37 巻 2 号 p. 107-116

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抄録

はじめに: 胃全摘後患者の栄養改善とQOLの維持を目的として, ボタン型胃瘻カテーテルを応用した新しい腸瘻造設術 (low profile button jejunostomy: 以下, LBJ と略記) 考案した. その手技および効果について検討したので報告する. 方法: 胃全摘術, Roux-en Y再建術を行った23例を対象とした. 手術時, Y脚空腸にLBJを行った. 術後腸瘻カテーテルより補助経腸栄養を行った. 結果: 術後6か月以上腸瘻カテーテルから補助経腸栄養を活用したのは21例 (91.3%) であった. 術後BMIは減少したが, 血清トランスフェリン値, プレアルブミン値, レチノール結合蛋白値は上昇した. 術後アンケート調査では, 腸瘻管理の煩雑さはほとんどなく, 本治療に対してほぼ満足であるという結果がえられた. LBJの合併症には重篤なものはなかった. performance status (以下, PSと略記) が術前後で変化がなかったのは6例 (26.1%) で, 17例 (73.9%) は術後に低下がみられた (16例がPS-0からPS-1, 70歳の在宅癌化学療法施行例の1例がPS-1からPS-2). 初回術後50%入院期間は22日であった. 術後6か月間の再入院は3例あったが, LBJの合併症や栄養障害によるものではなかった. 在宅癌化学療法は, 術後6か月間に平均3.3コース施行可能であった (奏効度PR1例, SD5例, PD1例). 結論: LBJは簡便で安全な手技であった. また, 胃全摘術後患者に対するLBJを用いた在宅補助経腸栄養は, 術後の栄養状態を良好に保ち長期的なQOL維持に寄与すると考えられた.

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